製造業勤務なら一読あれ バリューチェーン別製造業の会計監査実務ハンドブック

バリューチェーン別 製造業の会計・監査実務ハンドブック

 

 内部監査業務を担当するようになって5年経とうとしている。内部監査といっても、それまでに社内に知見や蓄積がなかったので(ない、というわけではなかったがだいぶ世間でいう内部監査とかけ離れているシロモノ)手探りで進めているうちに時間だけが経過してしまったというのが正直なところである。手当たり次第、といっても法務や財務会計と比較すると参考書籍の類も少ない。CIA(公認内部監査人)の国際フレームワークやテキストを読んでも、こちらの圧倒的鵜実力不足もあってか活かし方がわからない。なのでここしばらくは『内部管理の実務』シリーズ(中央経済社 東陽監査法人編)などを参考にする機会が多かった。業務プロセス別の編集ということもあって多様な業種の最大公約数的な内容であることは否めなかった。

 そんなところ、今年1月に刊行されたのが本書『バリューチェーン別製造業の会計監査実務ハンドブック』(中央経済社 有限責任監査法人トーマツ著)である。対象読者はまず監査人(公認会計士)であることは明らかなのだが、製造業企業に勤務する財務、経理、法務、内部監査担当者が手元に置くべき一冊だと思う。列挙した業務従事者は自部門の業務はきっちり務めることは間違いないが、必ずしも製造から販売に至るプロセスすべてに通じているとは限らない。本書で取り上げられている論点は法務部門が契約書レビュー時に確認すべき点かもしれないし、製造部門(工場)の責任者に任命された者が改めて業務の責任範囲を確認する際に参考になるかもしれない。異業種から転職してきた管理部門担当者にまず読んでもらうテキストにしてもよいかもしれない。

 要するに自分が待ち望んでいた書籍なのである。会計、監査の本と片付けるのではなく、製造業勤務の中堅社員以上は一読することを薦めたい。