数日前に呟いたコミュケーションスキルの話。
コミュケーションに苦手意識を持っていると、ひとくちにいっても事情は様々だろう。わかりやすいのは口下手で人前ですらすらと話すことが難しいというケースだが、口も筆もたつタイプなのに相手に伝わらないばかりか反発さえ受けてしまうので「苦手だ」というケースもあるだろう。後者のケースでは理解もせず反発をする相手側に問題がある、という人も多いのではないか。
法務、経理をはじめとする管理部門担当者と血気にはやる事業部門担当者との会話でよくあるケースだし自分も経験がある。どう考えても自分の方に理があるのにと、ストレスを抱える。
何回も話題にするのも気が引けるのだが、ふた昔前にマネージャー研修の社内講師をしてきたときのカリキュラムに交流分析(Transactional Analysis、以下「TA」)のエッセンスを取り入れた科目があった。もうひとつの研修科目の行動心理学よりも研修参加者の反応がよかったと記憶している。
詳しい解説は検索していただくとして、TAでは人に対する言動や態度は自分の自我の状態から出るもので自我の状態とは5つの要因から成るがこのうち一番強い要因が言動や態度に出る、としている。5つの要因を簡単にいえば、「父親的・論理的・厳格(CP)」「母親的・情動的・慈愛(NP)」「大人(A)」「自由な子ども(FC)」「従う子ども(AC)」といったところである。(自分がどのような自我状態か、というのは複数の質問に対する回答の分布を折れ線グラフで表記したエゴグラムで表される)
前述のマネージャー研修の参加者の多くは5つの要因のうちCPやAの傾向が強く現れていたが(そうでなければ困るのはたしかだが)、企業法務部門担当者は仮にマネージャーでなくても同様だと想像する。必要な資質であるし、そのような資質が強化される訓練を受けてきている。
ただ、リアルな会話だろうとメールやchatであろうとCPやAが強い自我からでる言動や態度とはどのようなものだろうか。腕組みをして眉間に皺を寄せながら「ルールに反します」「リスクが高すぎます」「あなたの気持ちは別にして」などといっているかもしれないし、chatで「NG、理由は何々」と短く返しているかもしれない。
間違ってはいない。ただ相手にも自分と同じCPやAが高い自我の状態を求めていないだろうか。ひいては「正論ハラスメント」に陥っていないだろうか。
これも何度もいっているが自分(今は内部監査の立場)から見れば法務はビジネス部門である。事業部門の担当者のように切った張ったの商談をすることはないが、後方あるいは側面から、事業部門が道から逸れずに、そして余計なリスクを負わずに組織の事業目的を達成させるという役割を担っていると考えている。法務部門の言動や態度が原因で事業部門側が情報を隠すというような状況を作ってしまうのは避けなければならない。
ではTAを具体的にどのように活用するのかというと、自分が担当した研修だと丸1日の講義と演習になる。検索なり生成AI で会話してみてほしい。
法務や監査担当者はロジックの土台はできていると思う。ただ、それだけで他者に伝えたいことを十分伝えることは難しい。心理学的なアプローチを加えることで、自らの役割を果たすことができるのではないか、という話でした。